日時:11月17日(土)
①環境問題
京都大学大学院教授 木村 亮 先生
発展途上国の道路環境を考える
土木とは、環境を修復する活動であり、道を作る、治水、緑化など、普通の暮らしを支えていることや、何か問題・課題を発見したら、それを解決しようと思う気持ちと、使命感、技術革新が必要(Question→Passion→Mission→Innovation)であることを学んだ。また、観察力、問題の単純化、情報収集、言葉の壁を超えること、そして発想力が大切である。
日本では90%以上の道が舗装されているが、世界、特にアフリカの国々では80%以上の道が舗装されておらず、雨季にはぬかるみ、通行できないほどの悪路となる。道が整備されていないせいで、学校にも病院にも行けず、農作物を市場に売りに行くこともできないため、貧困が解消されない現状がある。道を整備することは、暮らしを豊かにすることに繋がっていく。機械を使わずに住民が自力で道を整備する方法として、木村先生は土嚢を使った工法を考案し、現地の人々に技術教育を行った。土嚢工法は低コストのため都度メンテナンスが必要だが、現地の人々が自力で行うことができるため、「自分たちでできる」という自信につながった。また、道が通れることによって現金調達が可能になり生活が豊かになる第一歩にもなった。木村先生は土嚢工法の普及活動を通じ、若者の雇用創出プロジェクトをビジネス化し、政府を巻き込んだ社会企業として発展途上国の手助けを行っている。
②教育・人権・ボランティア/③文化研究
京都大学名誉教授 藤田正勝 先生
グローバル化時代における学問の意義―とくに人文学(humanities)が果たす役割
グローバル化時代における学問の意義について、パワーポイントを用いながら高校生にもわかりやすく講義していただいた。
最初に「人文学」とは何か、その定義と現状について。人文学の重要性を理解するため、次にスコレー(閑暇)の重要性について。さらに自由学芸という考え方についてお話いただき、それを実現するのが大学(universitas)であると。最後に人文学が果たしてきた役割・果たすべき役割について。人文学は他者に開かれたものである。排他的なナショナリズムが力をもち、民族や宗教、国家のあいだの対立や軋轢が深まっている現代において、改めて多様な文化や価値に目を向け、相互に理解しあうことが必要であり、そこで人文学が果たす役割は大きい。そのような地道な努力を通してしか、現代社会が抱える諸問題は解決されない、という言葉で締めくくってくださった。また次のような質疑応答がなされ、生徒の理解が深まった。
Q. 進むグローバル化をどう考えるか。
A. 立ち止まって考える必要がある。
Q. 古典を対話的に読むとは具体的にどういうことか。
A. 自分の知識や考えとの相違やズレなどをどう受け止めるか、相手にどう疑問を投げかけ、相手は何を答えてくれるのか、架空のイメージをもって読むということ。古代の文章は対話的に書かれたものが多く、自然と対話に引き込まれる。
Q. 人文学で何をすればいいのか。
A. 人と議論すること。たくさんの文章と対話する、疑問をもちながら文章を読むこと。
Q. 現代の哲学者はどんな考えをもっているのか。
A. 現代の哲学者には今回の講義内容について論じている人はあまりいない。文部科学省が即利的な通達を出したときは多くの人が反対した。
Q. 哲学を学ぶ面白さとは。
A. 相手に自分の考えを伝えること。様々な人と議論すること。等々
④法・歴史研究
三重大学人文学部教授 樹神 成 先生
記者殺害(サウジ)、公文書破棄(日)、Twitter(米)から考える民主主義
次の3つの話題について講義がなされました。
① シリア取材で拘束され、先日解放された安田純平氏や、トルコのサウジアラビア総領事館で殺害されたカショギ氏について、危険な取材を行うジャーナリストとその自己責任論の是非などについて。
② 経済産業省が公文書を書く際、「政治家との折衝について、個別のやりとりまで記録する必要はない」とする内部文書を作成していたことを題材に、情報公開と民主主義の関係性について。
③ トランプ大統領が自身に批判的なメディアを会見から退席させたことを受け、アメリカの新聞社が一斉に報道の自由を主張する社説を発表したことを題材に、権力者とマスコミの関係性について。
これらを受けて、生徒たちの意見交流、発表を行い、以下のような発言がなされました。
●ジャーナリストの自己責任論を語るには、まずその報道に意義があるかが重要。その意義とは、国民に利益を与えるかどうかである。
●公文書の問題については、政府とつかず離れずの距離感で、独自に判断を下すことができる監視機関を置くべき。
●フェイクニュースの問題について、トランプはメディアが国民の敵だという。では、メディアは誰の味方なのか。そもそもメディアが本当にいいものなのか疑わしい。
⑤医療問題
三重北医療センターいなべ総合病院 救急総合診療統括部長 久留宮 隆 先生
「私と医療」命をつなぐもの-世界の医療の現状-
前半は、講師の先生から国境なき医師団で実際に体験した時の話を、後半は、マンダラートという手法で「いのち」についてのグループワークを行った。
(前半)世界のどこかでは常に戦争が行われており、十分な医療が受けられずに苦しむ人々が数多くいる。講師である久留宮先生は、紛争地域で医療活動に従事された経験をお持ちで、リベリア・シエラレオネ・ナイジェリア等の紛争地帯における過酷な医療活動の実態についてお話しされた。生徒は、けがや病気で苦しむ患者の実態や実際に行った手術に関して、興味深そうに聞いていた。
(後半)マンダラートという手法を用いて、いのちから連想される物事を書き出し、ポスターにまとめて発表を行った。生徒たちは活発に話し合いを行い、命の大切さについて改めて考えることができた。
⑥グローバル・ビジネス
JICA専門家 元タンザニア産業貿易省政策アドバイザー 水野 由康 さん
もし君がアフリカの経済アドバイザーになったら?
JICAでのアフリカ派遣の経験からアフリカの現状を説明しつつこれからのアフリカ支援について考えました。
・アフリカ経済のスクラップ&ビルド
・農産物輸出から、農産物加工業へ
・タンザニアで活動する日本企業、日本人
・自分が経済アドバイザーならどうするか?(ディスカッション)
①国際規格を適用するべきか? 村の生産者にその力は無い。
②限られた資金を、老人医療に回すか? 生産性の向上に回すか?
③インド系大企業よりもアフリカ系企業を支援することは不公平か?
最後は、各班で話し合ったことをまとめて発表し合いました。